このページでは、遺言に書けること(遺言事項)についてご紹介いたします。
遺言に書けることは、大きく分けて、法律的に効力を発揮する「法定遺言事項」と、法律的な効力は無い「法定外事項」の2つです。法定外事項は、付言(ふげん)事項という呼び方をする場合もあります。
法律的に効力を発揮する「法定遺言事項」には、大きく分けて、「財産に関する事項」「身分関係に関する事項」「遺言執行に関する事項」「その他の事項」があります。
遺言に書けること
法定遺言事項
・財産に関する事項
・身分関係に関する事項
・遺言執行に関する事項
・その他の事項
法定外事項(付言事項)
法定遺言事項
財産に関する事項
相続分の指定・指定の委託(民法第902条)
民法で定められている「法定相続分」とは異なる割合を指定することができます。「長女に3分の2、次女に3分の1」というように指定する場合です。この場合の相続分を「指定相続分」と呼びます。
遺産分割方法の指定・指定の委託(民法第908条)
相続人ごとに受け継ぐ財産を指定することができます。「A土地は長男に、B土地は次男に」というように指定する場合です。自分で指定する以外に、第三者に指定させることも可能です。また、5年を超えない期間を上限として遺産の分割を禁止することもできます。
特別受益の持戻しの免除(民法第903条第3項)
特別受益(とくべつじゅえき)とは、生前に他の相続人と比較して格別に受けた恩恵のこと(生前贈与など)です。遺言で何も書かなければ、民法で規定されるとおりに法定相続分に持ち戻しされます。その持ち戻しがされないようにするのが「特別受益の持戻しの免除」です。
相続人相互の担保責任の指定(民法第914条)
相続人相互の担保責任とは、相続した遺産に欠陥があった場合には、相続人はそれぞれの相続分に応じて、その欠陥がある遺産を相続した相続人が被った損害を賠償する責任を負わなければならないことをいいます。この担保責任の負担者や負担割合について、遺言によって指定することができます。
遺留分減殺方法の指定(民法第1034条但し書き)
遺留分(いりゅうぶん)とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者・子・直系尊属)に保障されている、遺言によっても侵害することができない最低限の遺産を受け取る権利のことです。遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)という方法によって、遺留分に相当する財産を返すことを請求できます。
遺言書で遺留分減殺方法の指定がなければ、遺留分を侵害している者が受け取った遺産の価格の割合に応じて返還することになりますが、返還されるべき財産の割合(金額)を指定したり、返還されるべき遺産の順番を遺言で指定することができます。
遺贈(民法第964条)
遺贈(いぞう)とは、法定相続人以外の方に遺言によって財産を贈与することです。与える割合を指定する「包括遺贈」と、与える財産を指定する「特定遺贈」があります。ただし、遺留分については注意が必要です。
一般財団法人の設立・財産の拠出(一般法人法第152条第2項等)
遺言により、一般財団法人を設立することができます。遺言書に一般財団法人の設立が定められている場合には、遺言の内容を実現するために指定される遺言執行者や設立時の理事などが、設立に必要な手続きを行います。
信託の設定(信託法第3条第2号)
信託(しんたく)とは、委託者が受託者に財産の管理や処分をさせることをいいます。信託の設定は、遺言を作成する人が委託者となり、財産の管理や処分を家族や信託銀行などの受託者に委託することです。
身分関係に関する事項
認知(民法第781条第2項)
認知(にんち)とは、婚姻関係にない夫婦の間に生まれた子を、自分の子であると認めることをいいます。認知は遺言でもすることができます。
未成年後見人・未成年後見監督人の指定(民法第839条第1項等)
未成年後見人(みせいねんこうけんにん)とは、未成年者の「親権(しんけん)」を行うものが誰もいなくなってしまった時に、その未成年者について家庭裁判所から選任される後見人のことです。その未成年後見人を遺言で指定しておくことができます。未成年後見人を監視するための未成年後見監督人を指定することもできます。
相続人の廃除・廃除の取り消し(民法第893条、第894条2項)
相続人の廃除(そうぞくにんのはいじょ)とは、虐待や浪費癖があるという理由で相続させたくない(推定)相続人から相続権を奪うことができる制度です。すでに廃除した(推定)相続人を、もう一度相続できるようにする推定相続人廃除の取り消しも遺言によってすることができます。
遺言執行に関する事項
遺言執行者の指定・指定の委託(民法第1006条)
遺言執行者(いごんしっこうしゃ)とは、遺言の内容を実現させる役割を果たす人のことで、遺言で指定することができます。自分で指定する以外に、第三者に指定させることも可能です。
その他の事項
祭祀主催者の指定(民法第897条第1項但し書き)
お墓や仏壇などを相続する人を遺言で指定することができます。遺言で指定しない場合は地域の慣習で決め、慣習が認められない場合は家庭裁判所が定めます。
保険金受取人の変更(保険法第44条)
平成22年4月1日から施行された保険法において、遺言によって生命保険金の受取人を変更できることが明文化されましたが、可能であれば生前に保険金の受取人を変更しておく方が確実といえます。
法定外事項(付言事項)
法定外事項である付言事項(ふげんじこう)には、法律的な効力はありませんが、例えば、葬儀の方法、自分が入るお墓、お寺などの要望を付言として記載しておくこともあります。また、遺言によって法定相続分よりも少ない取り分しか得られなくなった相続人に対して、少なくした理由や思いなどを記載して争いが起きないようにお願いするなどの付言を記載しておくことには非常に意義があります。
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