自筆証書遺言の4つの成立要件
亡くなった被相続人が遺言書を残している場合には、遺言の内容にしたがって遺言者の財産が引き渡されます。
「普通の方式による遺言(普通方式遺言)」の種類としては、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類がありますが、
このページでは、自筆証書遺言の4つの成立要件を紹介いたします。
有効な自筆証書遺言であるための要件
自筆証書遺言は、法律で4つの成立要件が定められています。
民法 第968条 第1項
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
成立要件❶:全文を自書
遺言者本人が遺言書の全文を自分で手書きで書く必要があります。パソコンで書いたものや録音、録画、遺言者本人以外の代筆は無効になります。代筆が遺言書の一部分であっても、遺言書は無効となります。
財産目録
ただし、自筆証書遺言に財産目録を添付する場合には、その財産目録は、遺言者が自分で手書きで書いたものではなくても良いです(成立要件を満たします)。
※ 2019年1月13日以降に作成された自筆証書遺言に適用されます。2019年1月12日までに作成された自筆証書遺言の中に、自書によらない財産目録が含まれている場合には、その遺言が2019年1月13日以降に有効になるわけではありませんので十分に注意してください。
民法 第968条 第2項
前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
預貯金通帳のコピーや不動産の登記事項証明書を添付することができますが、遺言者の署名と押印が必要になります。
成立要件❷:日付を自書
遺言書を作成した日付を、遺言者本人が自分で手書きで書く必要があります。
日付は西暦でも和暦でも良いです(成立要件を満たします)が、日付が書かれていなければ遺言書は無効になってしまいます。
なお、遺言者が亡くなったあと複数の遺言書があるケースで、遺言の内容が抵触する場合には、最新の日付の遺言が有効となります。
☛☛☛ 「遺言書が複数ある場合にどの遺言が有効か」について詳しくはこちらのページをご覧ください
成立要件❸:氏名を自書
遺言書を作成した自分の氏名を、遺言者本人が自分で手書きで書く必要があります。
戸籍上の氏名を、戸籍謄本のとおりの文字で書きましょう。
住所(要件ではないので任意だが推奨)
なお、住所は書かなくても良いです(成立要件を満たします)が、氏名の前に住所を書くのが一般的です。
成立要件❹:印を押す
作成した遺言書に、印鑑を押す必要があります。
印鑑を押す場所について明確なルールはありませんが、自署した氏名の隣に押印するのが一般的です。
また、印鑑の種類についても明確なルールはありませんので、認印の押印でも良く(成立要件を満たし)、過去には拇印でも有効とされた判例もありますが、遺言者本人が作成した遺言書として実印での押印が好ましいです。
訂正印
遺言書を書き間違えた場合の訂正のやり方には、以下のようなルールがあります。
民法 第968条 第3項
自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
割印(要件ではないので任意だが推奨)
なお、遺言書が複数枚になった場合に割印が無くても遺言書は有効ですが、押印しておくことが好ましいです。
自筆証書遺言に封印は必要?
自筆証書遺言は、封筒に入れなくても良いです(成立要件を満たします)が、汚損や遺言者以外の者による偽造や変造の防止のために、封筒に入れて糊付けまでしておくことをおすすめします。
自筆証書遺言を封筒に入れて糊付けしたあと、封印をしなくても良いです(成立要件を満たします)が、遺言書に押印した印鑑と同じ印鑑で封印までしておくことが好ましいです。
まとめ
☛ 自筆証書遺言は全文・日付・氏名を自書し押印しないと無効になる
☛ 自筆証書遺言の財産目録は自署でなくても良いが署名捺印が必要
苦労して自書した遺言書が無効とならないためにも、自筆証書遺言の成立要件を確認してから遺言書を作成したほうが良いでしょう。
実際に遺言の効力が生じた(遺言者である自分が死亡した)後、遺言の内容を実現させるために。
☛☛☛ 「遺言書に書けること」について詳しくはこちらのページをご覧ください
☛☛☛ 「自筆証書遺言書保管制度」について詳しくはこちらのページをご覧ください
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