子供達が相続放棄したために起きた悲劇

ケーススタディ:相続~子供達が相続放棄して相続関係が複雑に~

良かれと思って相続放棄したことで、かえって相続関係を複雑にしてしまうことがあります。

このページでは、相続放棄が引き起こした悲劇を、事例をふまえて紹介いたします。

母にすべて相続してほしいという子供たちの思い

亡くなった被相続人Aさんには、妻Bさんと長女Cさん、長男Dさんがいました。

CさんとDさんは、母の今後の生活のためという思いから、亡くなった父Aさんの財産は、母Bさんにすべて相続してほしいと考えました。

そこでCさんとDさんは、亡くなった父Aさんの財産のすべてを母Bさんに相続してもらう方法を調べました。

そこで「相続放棄」というものがあることを知りました。

CさんとDさんが、亡くなった父Aさんの相続について相続放棄すれば、Aさんの財産を相続する権利を放棄することができると知りました。

CさんとDさんは、家庭裁判所での相続放棄の手続きを終え、亡くなった父Aさんの財産のすべてを母Bさんに相続させることができるものと安心していました・・・

相続放棄してひと安心、と思いきや・・・

・・・ところが!

いざ亡くなったAさんの財産をBさんの名義に変更する手続きを進めようとしたところ、衝撃の事実を知るのでした。

なんと、CさんとDさんが相続放棄したことで、生前Aさんと仲が悪かったAさんの兄Eさんが相続人になってしまったのです。

CさんとDさんは、相続放棄すれば自分たちが相続する権利を失うことは知っていましたが、ほかの誰かに相続する権利が移ることまでは知りませんでした。

☛☛☛ 「子供が相続放棄すると誰が相続人になるのか?」について詳しくはこちらのページもご覧ください

知ってたら相続放棄なんてしなかったのに・・・

今回は、亡くなったAさん(被相続人)の両親、祖父母、曽祖父・・・といった直系尊属が既に亡くなっていて、Aさんの直系卑属全員(長女Cさんと長男Dさん)が相続放棄したという状況で、相続権がAさんの兄Eさんに移ってしまった、という事例でした。

では、Aさんの兄に相続権が移らないようにしたまま、亡くなったAさんの財産のすべてをBさんに相続してもらうにはどうしたら良かったのでしょうか。

悲劇を生まないためには

今回の事例のように、相続人が複数人いて特定の相続人に財産をすべて相続させたいという場合には、財産を相続しない相続人が相続放棄するのではなく、相続人全員で遺産分割協議をおこなうという方法があります。

つまり、CさんとDさんは相続放棄をするのではなく、Bさん・Cさん・Dさんの3人で、例えば「Aの財産は、すべてBが相続する」という内容の遺産分割協議書を作成して、全員が署名・捺印するという方法です。

これは、いわゆる「財産放棄」という方法で、家庭裁判所での正式な手続きをおこなう必要がある「相続放棄」とは全く異なる方法です。

いわゆる「財産放棄」と「相続放棄」とが用語として混同して認識されてしまっていることもあります。

例えば、過去に相続の際に「財産を相続しないけどハンコだけ押した」というのは、家庭裁判所で正式な手続きをおこなう相続放棄ではなく、正確には財産放棄ということになります。

まとめ

☛ 家庭裁判所で正式に「相続放棄」すると相続権が移る場合がある

☛ 「相続放棄」は遺産分割協議によるいわゆる「財産放棄」とは全くの別物

亡くなった被相続人に可分債務(借金のように分割可能な債務)がある場合や、可分債務があるかどうか分からない場合など、いわゆる「財産放棄」ではなく「相続放棄」した方が良いケースもあるので注意が必要です。

☛☛☛ 「子供が相続放棄すると誰が相続人になるのか?」について詳しくはこちらのページもご覧ください

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